今回は、迫る2020年3月21日、仙台ハードコアレイヴ「Forward」の宣伝として、東北ハードコア内ではすっかりお馴染みとなった、通称「名誉顧問」ことただのお客さん、土手内さんにインタビューしました。
前半は、彼が高校生の頃に戸惑いながら初めて行ったクラブでの、 周りの同じ「好き」を持った「名前も知らない人達」と興奮を共にして盛り上がった体験や、不安だったこと、行ってよかったことなど、経験者なら共感できて、初めての人にはよいアドバイスになる内容です。
後半からは「ひとりの利用者」「ひとりのお客さん」として、より具体的な東北ハードコアの魅力や、東北ハードコアのこれからに期待することなどを質問しました。
まだクラブに行ったことがない方や、東北ハードコアのパーティーが気になっている方に向けた記事として、殿堂入りするほどとても濃く有意義な内容となりました。
ですので、まだクラブに行ったことがない方、東北ハードコアのパーティーが気になっている方は、ぜひ一読してから、クラブへの来場を心よりお待ちしております。
それではお楽しみください。
Contents
はじめてのクラブ体験
ではまず、土手内さんは今でこそ多くの現場に足を運んでおりますが、初めて行ったクラブのパーティ・イベントと、行こうと思った理由を教えてください!
自分が初めて行ったクラブで開催されるイベントは、2015年のTANO*C TOUR仙台ですね。
当時高校生で、jubeatをちょくちょく触っていたひよっこ音ゲーマーだったんですが、そんなエンジョイ勢でも分かるような有名なアーティストの方々が仙台にいらっしゃるという話をTwitterで知り、「これは行きたい!」と強く思いました。
しかし、なんと当日に部活の練習試合が入ってしまい、悩んだのですがやはりどうしても行きたい!!と思ったので、練習試合が終わったあとTwitterで #tanoc のタグを付けて「途中からでも入れますかね…?」と質問ツイートを投げてみたんです。
すると、なんとそのツイートにあのREDALiCEさんが「大丈夫ですよ!」とわざわざリプライを送ってくださったんです。
当時も今もなんですが、自分はアーティストはそれこそ雲の上の人と思っていまして、そんな方がこうしてどこの誰とも分からない人間に手を差し伸べてくれた、その一言が1番の「参加するぞ!」って動機の決め手となりましたね。
高校生の頃から!最近は10代の参加者も意外と多いと聞きましたが、当事者だったのですね! 驚きです。
心に残った、アーティスト自身の丁寧な対応
では、2015年のTANO*C TOUR仙台が初めてとのことでしたが、実際に参加してみてどうでしたか?
確か会場は移転前のCLUB SHAFTでして、まぁ当然そんな場所に行くのは初めてだったこともあり、当然会場探しで迷いましたし、入場する時もスタッフさんに「未成年って参加して大丈夫なんですか…?」って質問するほどにはビクビクしていましたね。
しかも自分は練習試合もあったので、なんと17時過ぎからの参加となりまして、t+pazoliteさんの途中から、そしてトリのREDALiCEさんだけしか見れなかったんですよ。
しかし、そんな状況でのイベント初参加であってもあの日は「最高」だったと断言できます。まず、何より「自分が好きなものを生み出している人」を自分の目で拝むことができたことに本当に感動しましたね。
t+pazoliteさんもREDALiCEさんも「この人のこの曲が好き」という尊敬、憧れの念のようなものを元々持っていたので、そんな憧れの人たちが直接「大好きな曲」を流し、周りの同じ「好き」を持った「名前も知らない人達」と興奮を共にして盛り上がる楽しさは筆舌に尽くし難い程の幸せな体験でした。
しかも、終演後物販でグッズを購入していたところt+pazoliteさんとREDALiCEさんがいらっしゃいまして、イベントの感想をお伝えする中で、物販で購入したTシャツとタオルにサインをお願いしたんです。
そんな図々しい頼みにも嫌な顔ひとつせずに快く引き受けて頂き、そんな優しさに直接触れたことでより一層アーティストへの好感度が増しましたね。
その時のサイン入りグッズは今でも大切に保管してあります。
記憶が薄くなってしまった今ですが、「”好き”を名前も知らない人々と共有出来た喜び」「アーティストをより一層”好き”になれた喜び」この2点は今でも最高の思い出として心に残っています。
楽曲を楽しんでいるツイートをお見かけしていた時点で大きなファンだったことは予想しておりましたが、楽しさの共有という点が意外でした!
ここまで感動していただけると、開催する側もとても嬉しくやりがいを感じると思います。
行く前に不安だったこと、実際に行ってみて驚いたこと
ではその初めてクラブイベントに参加する際に、不安だったことはありますか?
行く前に不安だった点に関しましては、そもそも「クラブ」とはどのような場所なのか?どのような空気感なのか?何をするのか?といった「分からなさ」が最も大きい不安点でした。
しかし、そもそも当時の自分は「クラブに行きたい」ではなく「アーティストをこの目で見てみたい」といった目的でTANO*C TOURに参加したため、「クラブイベントとは何なのか?」という疑問・不安はあるものの、「ワクワク」が大きかったです。
TANO*Cような「アーティストと会える場」とはまた異なってくる、ローカルのクラブ・パーティに初めて参加する際には上記の「分からなさ」を不安に感じる人は多いかと思われます。
では実際に行ってみて、予想してなかったことや大変だったことはありますか?
実際に行ってみた際には、「入場時のドリンク代」がクラブイベント初参加だったこともありとても驚きましたね。
今では会場にお金を落とすことの重要さを知っていますが、当時は「なんでドリンクがこんなに高いだ…」といった疑問を感じていました。
ドリンク、参加費といった若い人にとってのそこそこの金額を支払わなければならない点も参加のハードルの高さに繋がっている印象はあります。
そして個人的に大変だったこととして、「クラブは大荷物を持ち込むべき場所ではない」ことを知らなかったため、部活の荷物をどこに置くかであたふたした苦い記憶があります。当時はクロークの存在も知りませんでしたね。
入場料+ドリンクチケット代のシステムに関しては、最初は戸惑う方が多いみたいですね。
ちなみにクラブ店舗の場合、ドリンク代はすべて店側の取り分として計上される場合が多く、「レンタル費用+(入場料の利益-ドリンクチケット代の利益)」で最終的に清算しています。
400~600円と高額ですが、音響や照明、場所代や人件費もほとんどドリンクの売上から賄われるため、持ち込みをせず、積極的にクラブ内のバーを利用していただけると、各種設備が立派になったりします!
クローク(スタッフによる荷物預かりサービス)やコインロッカーもあったりなかったり店舗によって差があるので、事前に調べておくと安心ですね。
東北ハードコアの独自性
では次に、地元東北に焦点を当てていきたいと思います。
土手内さんはHARDCORE TANO*C関連のイベントなどに参加された経験がありますが、それらと比較して、東北で開催されたハードコアレイヴの独自性、ほかの現場にはない魅力は何だと思いますか?
「お客さんと演者さんとの間に垣根が無い点」であると考えています。
TANO*Cは「アーティスト」と「ファン」の関係であり、ライブイベントとしての側面が強いと感じていますが、東北ハードコアシーンはそれこそ「お祭り」であるかのように演者さんとお客さんが一体となって楽しみ、上も下もない同じ立場で「一緒に楽しい空間を作り上げる」ことが自然と出来ていることが強み・魅力です。
この点はHARDCORE TANO*Cのイベントと比較した際だけでなく、他の地域のローカルパーティと比較しても、一歩先を進んだ独自の魅力であると感じています。
東北(仙台)ではFORWARD、RAVERS CALLINGを始めとして様々なパーティを開催していますが、どのパーティにおいても上記の魅力は変わらず、常に「どうしたら新しい楽しみを生み出せるか」を演者さんとお客さん共に自然と追求できている点は前面にアピール出来るポイントであり、ズバリ東北ハードコアシーンの素晴らしさの本質であると思われます。
時折お客さん用マイクがセッティングされていたり、「お客さんが主役」を物理的に実現していたりしますからね。
確かに他のローカルシーンから見ても特異なものとして目に映っていることでしょう。
一番記憶に残っているパーティー
そういった大きな魅力のある東北ハードコアですが、土手内さんが今まで参加した東北ハードコアのパーティーで特に記憶に残っているものを教えて下さい!
本当に全てが最高のパーティだったと記憶していますが、その中でも最高だったのは2019年TANO*C TOUR仙台が開催されたその夜に行われたFORWARD vol.8でした。
TANO*C TOURの当日夜ということもあり、疲れで参加者が減るのか、はたまたTANO*Cからハシゴをしてくれる方がいらっしゃるのか、客でありながらドキドキしていましたが、結果は素晴らしいものとなりました。
ツアー仙台を目的に仙台へ来ていただいた方々に東北ハードコアシーンの楽しさを体験して貰えただけでなく、あのDJ Norikenさん、Gettyさんといったツアー仙台のアーティスト陣に飛び入りで参加して頂き、さらになんとあのDJ Shimamuraさんが「このパーティのために」わざわざ仙台まで足を伸ばしてくれたというあまりも豪華な伝説の回となりましたね。
東北ハードコアシーンで形成されるいつものテンションもより一層熱いものとなっていたように思えますし、その「楽しさ」が過去にゲストとして来仙して頂いたアーティスト達に伝わっていて、それが身を結んだ、いわばある種の「東北ハードコアシーンの集大成」としてのパーティが出来上がっていたことに、客としての身でありながら胸を熱くしました。
この回が今までで最も楽しかったパーティではありますが、最近のパーティにおいても「どうしたら楽しめるか?」を追求する姿勢が熱心に続けられていることをひしひしと感じているため、これからもまだまだ東北ハードコアシーンが成長していくのだなぁという期待を抱いています。
その回のFORWARDはまさに伝説となりましたね。開催前から出演陣は気合が入っておりピリピリしてました。
イベントが開催された直後とは思えない熱気に包まれてレイヴが進行していきましたね。
注目しているDJ、アーティスト
では次に、土手内さんが注目している東北ハードコアDJがいらっしゃれば教えて下さい。
実際のところ東北ハードコアDJの方々は全員リスペクトしていますが、特に注目している2人であるはりーさんとスガハルさんについて今回は少しお話させていただきます。
まずはりーさんですが、やはりあのインタビュー
(「国内でジャンルの人気を上げていくには、地方からのプッシュアップがすごく大事」 DJ Harryハードスタイルシーンへ、地方・仙台からの挑戦 )
を見たことがきっかけで現在注目している方のひとりとなっています。
「好きな物」を「好きでいる」だけで終わらせずに、一歩進んで「どうすれば良さを広められるか」という視点で動いていて、DJを始めるだけでなくパーティのオーガナイズに至るまでのスピードが、自分の知る範囲の中では最も速かった人として認識しています。
そんな頭一つ抜けた行動力を持つはりーさんによって東北ハードコアシーンはどのように変化していくのかをこれからも楽しみにさせて頂きます。
次にスガハルさんですが、個人的な交流もあり色々とお世話になっている方です。その個人的な交流においてあの方の「良いDJを目指す探究心」に触れたのが注目するきっかけです。
あの方のTwitterを見ますと、自分のDJの技術力について「まだまだ」「あそこが悪かった」といった反省点を挙げる姿が散見され、傍から見ると自信が無いように見える方もいらっしゃると思いますが、スガハルさんは「自己の能力を客観的に分析することが出来る」能力を持っていると感じています。
良かったところもあるかもしれない、それでもより高い技術を、より上を目指すのならば反省点を振り返り続ける必要がある。それを実行出来る非常にストイックな性格がスガハルさんの強みの一つであると考えています。
他にも、DJをしている際にフロアを湧かせるような行動を心がけている点、「好き」に裏付けされたハードテックへの探究心なども強みであると考えていますが、やはり「ひたすらに上を目指そうとするストイックさ」がこれからの伸び代の大きさを物語っており、注目すべきDJであると考えています。
ではそのまま、同じく土手内さんが注目している東北ハードコアのトラックメイカーを教えて下さい。
東北トラックメイカーの中で注目しているのはStringampさんですね。元々、SoundCloudで公開されているShadow Raveを始めとする曲を聴いて、自分が知っているアーティスト達と比較しても遜色ないような音鳴りの曲を作れる方との印象があり、いつも新曲を楽しみにしていました。
そんな中、先日の春M3-2020では、今勢いに乗っているアーティストの1人であるYuta ImaiさんのコンピレーションにStringampさんが参加されており、非常に驚きました。
錚々たる参加者の中にいてもStringampさんの曲は見劣りしているなんてことはなく、素晴らしい1曲に仕上がっており、決してお情けで収録枠を頂けたなんてことは無い、と視聴者目線ですが自信を持って言えます。Stringampさんは「次に名を広めるアーティストの候補の中の1人」として、僭越ながら期待と応援をさせて頂きます。これからの更なる成長が楽しみなアーティストですね。
未来の東北ハードコアに期待すること
では次は、東北ハードコアのこれからに期待することを教えて下さい。
やはり「若年層」が昼夜共にイベントの新規層として増えていって欲しい、という思いがあります。
どんな界隈、文化においても、「新規層」が途絶えてしまえば衰退していく一方であることは歴史、実体験の両方で学んでいます。
だからこそ「新規層」、その中でもこれからお客さんとしてだけでなくDJやパーティのオーガナイズを始めるために動くことの出来る「活力」及び「時間」を併せ持った、「若年層」を取り込んでいくことが重要であると感じています。
自分が今楽しめているこの素晴らしい環境を守るためにも、「若年層の取り込み」をどのような形で行うかを考えることは将来を見すえた重要なポイントであり、「お客さん」「演者さん」関係なく一丸となって試行錯誤していくべきものであると思います。
もし自分が東北を去ることになっても、またいつの日か帰ってきた時に「今以上」の活気を持った場所になっていることを期待しています。
おっしゃる通りだと思います。
この記事が、クラブに行ったことがないけど興味のある若い人に届いて、来場のきっかけになれば良いですね。
参加者から見たForwardだけの魅力
では最後に、今週土曜日にいよいよForwardが開催されます! お客さんの目線で、他のパーティーにはないForwardだけの魅力を教えてください!
「誰もが輪に入りやすい」ことではないかと考えています。
どのイベント、パーティにおいても当然その場特有の空気感が存在していますが、FORWARDはその空気感が先程述べたように「お祭り」と言えるようなものになっており、マナーとルールさえ守ればとにかく「バカ騒ぎ」していれば新規、常連関係なく同じ輪の中に入ることが出来るのは、初めて参加される方にとって強い魅力であると考えています。
パーティの空気感が「お祭り」と複数回話していますが、「お祭り」であるからこそ、とにかくひたすら「楽しさ」に特化した空間になっている事が、参加した誰もが「FORWARDは本当に楽しい」「また遊びに行きたい」と話すことに繋がっているのではないかとも考えています。
もし東北ハードコアシーンに興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひ今週末の3/21(土)23:00から開催されますFORWARDにお越しください、何度も参加してる身として「最高のバカ騒ぎ」を保証します。
( 客なのに告知まで・・・これが名誉顧問・・・! )
本日は長々とお付き合い頂き、ありがとうございました!
いかがでしたでしょうか?
今回は通称「名誉顧問」ただの客、土手内さんにインタビューを行いました。
参加者からすれば頷けること、そしてクラブのイベントを運営する側からすれば、胸が熱くなる言葉をたくさん聞くことができました。
なんだか興味が湧いてきた!という方は、Twitterにて「#バロンドール」で検索してみてくださいね!
初めてなので気になること、わからないことがあれば、「#バロンドール」をツイートしているアカウントにDMを送信すると必ず答えてくれます。また、東北ハードコア情報局でも、ご質問、ご要望など随時受け付けております。
もちろん名誉顧問の土手内さんに尋ねるのもオッケーです!
皆さんのご来場を、心よりお待ちしております!